バンコク記(8)
ワット・ポー
寝釈迦が輝いている。
太い柱の間に横たわる釈迦、窮屈そうだ。
本堂、靴を脱いで入ると高い天井の空間、
その正面にそそり立つ黄金色の輝く仏像、
突然出っくわした光景に一瞬たじろぐ。
申し合わせたように、
「此所に入ったら坐りなさい」
と言われるわけでも無いのに、皆膝を折って広間に座り込む。
半分は一心に祈るタイ人、
後の半分は、決められた矢印の順序に従って来て、
突然訪れた静寂に戸惑いながら、
周囲の人々に合わせて中腰で仏像を見上げたまま座り込む旅人達。
私も其の一人、半ば茫然と仏像を睨んでいると、
安堵感の様なものが身体中から沸き上がってくる。
辺りを窺うと、祈りを捧げる人に交じって、黙想している人、
まなこを大きく見開き仏像と格闘している人、
じっと考え込んでいる人、
何処かで見た事のある風景、
そうだ、カタツムリ、皆何かを背負っている。
隣に坐ったガイドさんらしい女性が私をつつく、
「足を投げ出してはいけません」
英語と手真似だ。
一寸のつもりが長居して居る内に何時しか足を投げ出していたらしい。
つづく